東京高等裁判所 昭和25年(う)4604号 判決 1950年12月16日
被告人
鈴木清
外一名
主文
本件各控訴を棄却する。
当審における国選弁護人等に支給された費用は、それぞれ当該被告人の負担とする。
理由
被告人染谷勝造の弁護人大橋弘利の控訴趣意の第一について。
医師宮内義之介作成の川上貞夫の死体に対する鑑定書が所論のように検察官の嘱託により、死体の解剖によつて作成されたものであることは、該鑑定書自体の記載に徴し明らかであるが、原審の証拠調の程度においては、該鑑定が死体の解剖につき裁判官の許可を得たものか否かは判明しない。しかしながら、原審第一二回公判調書の記載によれば、原審公判廷において、検察官が該鑑定書の証拠調を請求したのに対し、被告人染谷勝造の弁護人及び原審相被告人等の弁護人等は、いずれもこれを証拠とすることに同意する旨の陳述をし、右被告人等は、何らこれに反する陳述をしなかつたことが明らかであるから、被告人のため包括的代理権を有すると解すべき弁護人の地位に鑑み、右弁護人等の同意の陳述は、右被告人等のため効力を生じ、右鑑定書は、証拠能力を有するものと解すべきである。従つて、該鑑定書を証拠に援用した原判決には、所論のような採証上の違法は存しない。論旨は、理由がない。